事例紹介
余市水産博物館 | 北海道
余市湾を中心とした「海の歴史」学習プログラムの構築に係る基礎的研究―「林家文書」からみるヨイチ場所における近世場所請負制度の様相―
PROGRAM3 海の学び調査・研究サポート
実施期間 | 2023年4月1日~2024年3月31日 |
主催 | 余市町教育委員会 |
開催場所 | 余市水産博物館 |
調査研究の内容・目的
- 余市町は、北海道の西部、積丹半島の東の付け根に位置し、町の北側は日本海に面し、他の三方はゆるやかな丘陵地に囲まれた町であり、先史時代より自然の恵みを享受し、交易の中継地点として栄えてきた。特に、近世から明治期にかけて、北前船の寄港地としてニシン粕を輸出し、瀬戸内における綿花栽培や藍栽培、煙草栽培等の日本列島の発展に寄与した。
- その中で、近世から明治期にこれらの物流交易の中継地として機能した「旧下ヨイチ運上家」は、近世北海道の場所請負制度を担った場所請負人が管理する交易所及び役所の機能を有し道内の各「場所」に設置された「運上家」と呼ばれる施設の一つで、現存する建物としてはこの「旧下ヨイチ運上家」が唯一であり、「旧下ヨイチ運上家」の場所請負人・林長左衛門が残した「林家文書」は、運上家の運営や漁場での生活を知る重要な資料であり、余市町における海運やニシン漁の様相や歴史を伝える貴重な資料である。
- しかし、当資料は、その数が膨大であることや資料の散逸により資料の所有施設が複数あり、資料の全容が明らかになっておらず、調査研究及び利活用が困難であり、横断的な資料調査及び目録の作成が急務となっている。このことから、「林家文書」の横断的かつ悉皆的な調査を行い、「林家文書目録」を作成し、その中から町の歴史に関する事柄を抜き出し、それらについて調査研究を進める。そして、当時の余市湾における物流交易の様相を明らかにし、海を中心とした町の発展や過去の話となりつつあるニシン漁が町の発展に寄与した歴史を再整理する。
- 併せて、研究の成果を基礎資料とし、小中学生を対象とした「「海の歴史」学習プログラム」を構築し、余市町における「海の歴史」学習が促進され、海の歴史が再認識される一助となり、子供たちが過去から現在に至る海の歴史を学び、地域の誇りを醸成することに繋がると考えられる。